雁の巣の夕日

♪寝坊できる休みの日にも
 なぜあわててとんでゆくの
 そんなに夢中にさせるもの
 のぞいてみたい♪

ユーミンの『まぶしい草野球』
1980年に発表されたアルバム『SURF&SNOW』が、タイトルの通りスキーやサーフィンをテーマにしている中にぽつんと一曲。ユーミンが野球について歌っているのは多分この曲だけではないだろうか?

8月26日 フレンドシップリーグ秋季大会開幕
先日の監督会議で「グランド当番」を引いてしまったため、6時半集合で雁の巣へと向かう。

高層の寒気が去り、夏の空に落ち着きが戻ってきた。
ただ「戦後最大級」の台風が沖縄に接近しつつあり、風は強い。

千早からアイランドシティに抜け、「海の中道大橋」を渡るいつものコース、ペダルを漕ぐ。
しかし今日は、橋の中ほどに、花とジュースが置かれている。

6年前(2006年)の8月25日夜、かぶと虫を探しに出かけていた一家5人が乗った車が、飲酒運転の後続車に追突され橋から落下。4歳と3歳の男の子、そして1歳の女の子が亡くなった。
自転車を降り、手を合わせる。

もう6年。生きていれば、5年生、4年生、そして1年生といった年頃だったはずだ。(前後あるかもしれないが)

この橋が開通したのは2002年の10月。
それまで雁の巣へ向うには和白交差点を経由するしかなく、渋滞に悩まされたものだった。
現在、博多湾側にもう2車線の工事が進む。開通予定は2014年。

橋の上から見る海は風の割に穏やかだ。
右手に和白干潟。朝鮮半島を経てユーラシア大陸と日本列島をつなぐ渡り鳥の中継地である。
世界的にも希少なクロツラヘラサギやミヤコドリなど水鳥の種類の豊富さは国内でも屈指で、この干潟の保全のために海岸埋め立てではなく人工島の建設が選択された。

左に目を転じると、海の中道を経て志賀島、そして能古島が博多湾を守るように囲む。
古代、宗像から志賀島にかけて安曇族と呼ばれる「海人」が勢力を持ち、大陸と九州、あるいは山陰の古代国家間交流で大きな役割を果たした。糸島半島付近に「伊都国」が栄え、板付遺跡にみられるように、東アジアからここを通じて稲作が日本列島に伝えられたと考えられている。


和白地区は江戸時代には黒田藩のもとで、松原の保全と塩田の開発、干拓などが行われた。
時代は下り昭和11年、雁の巣に日本一の国際線民間飛行場が開業する。
敷地面積59万平方メートル、滑走路(600×30m)1本、海岸に水上機の滑走台(80m)と格納庫2棟が整備。
水陸両用の飛行場だった。

その後拡張工事が行われ、総面積は135万平方メートル、滑走路は800m級2本の交差型となり、朝鮮・満州・台湾などへの連絡基地や国防上の要衝となる。
隣接する香椎線(当時、博多湾鉄道汽船粕屋線)の線路の移設も行われた。

戦後は米軍に接収され、朝鮮戦争やベトナム戦争時に補給基地、通信基地などに使用されたが、1972年に飛行場部分が、そして1977年に全域が返還された。

橋の左手前方に広がるこの跡地が、市民のスポーツ施設として整備されたのが、「雁の巣レクリエーションセンター」である。福岡小学生ソフトボーラーの聖地。


ソフトバンクホークス2軍が練習や試合に使用する雁の巣球場を始め、少年野球場1面、硬式野球場1面、軟式野球場11面、ソフトボール場は専用球場を含め5面、J2アビスパ福岡が使用する全面芝張りのサッカー場3面、クレーの球戯場3面、テニスコートなどを擁する。

海の中道大橋の開通と、隣接する道路整備の際、空港時代の老朽化した格納庫が危険だと言う理由で解体されが、ベテランの指導者の方々はその姿を記憶に留めているのではないだろうか。今も一部に、当時の滑走路の名残か黒いアスファルトが残る。

橋を下り、今年できた新しい入口から敷地内に入る。夏季(4月~10月)のウイークエンドは午前7時からのグランド使用が可能なため、すでに多くの早朝野球がキャッチボールを始めている。

中には、冒頭の歌のように、恋人や、あるいはボーイフレンドの試合を見るために来たんだろうなあという、「雁の巣には似つかわしくない」ファッションに身を包んだ若い女性の姿も。
何も知らずに、近所の公園あたりをイメージしてここを訪れると、やたら広い場内と、駐車場から果てしなく遠い(と感じるであろう)グランドを見つけるのに苦労することになる。

クラブハウスが整備されたサッカー場を横目に、金網と、申し訳程度のベンチ、ポツンと建つ東屋の中で白い球を追いかけるユニフォーム姿の彼氏を見つけることはできただろうか?

彼氏を見つけ一安心。思いのほか強い日差しに日傘を持ってくればよかったな、と後悔しながら彼女は、やがてやけに騒々しく荒々しい声・・・怒声を耳にすることになる。

「おらおら!なんでストライク見逃すか!積極的にイケ~!」

「ボール!ボール!ボール振っても当たらんぞ!」

「走れ!ダッシュ!歩くな!ボケー!」

「回れ!回れ!走れーーーーーーわああああああああああああああああああ!」


(なんなの・・・・この人たち?)

どうやら小学生のソフトボールチームのようだ・・・
大人も子供も、異様に黒光りした肌をしてる。
一球一打一投足のたびに悲鳴ともつかぬ歓声をあげ、ベンチで怒られて泣いてる子もいる。

弟や妹だろう小さな子は試合そっちのけで、追いかけっこや虫取り・・・水を浴びてる子も・・・


それぞれのチームが、テントやブルーシートを組み合わせて、前線司令部の基地のような陣地を作っている。
その傍らの草むらに輪になって腰を降ろし、容赦ない日差しが照りつけるなか、子供たちがミーティングをしている。


(なんだかおしゃれじゃないかも・・・)





そんな感想を持った彼女は、やがて彼と結ばれ、夏はマリンレジャーや海外旅行、冬はウインタースポーツ、温泉巡りなど休日を楽しみ、やがてかわいい赤ちゃんが・・・

そして数年・・・その子が小学校に入り、ある日こんなことを言い出す。
「お母さん。こんどの土曜日、友達の○○くんがソフトボールしにあそびに来んって?○○くんとお兄ちゃんが入っとるソフトボールチームなんよ」


ちょっと見学に行ったつもりが、いつの間にかお父さんが押し入れから昔使っていたグラブを取り出して・・・









いろんな思い出、いろんな季節を重ねつつ雁の巣に通う日々。
今年初めての人。
今年が最後の人。

思いは交錯しながら、上空を定期的に横ぎる飛行機の影を感じ、白球が雲に溶ける。


フレンドシップリーグ秋季第一節
千早西 1-1 那珂イーグルス
千早西 3-1 美野島クラブ
千早西 0-0 板付北クラブ

(教育)
千早西・香椎ウイングス合同 0-6 那珂イーグルス
千早西・香椎ウイングス合同 4-4 美野島クラブ

思わぬ3連勝に意気揚々と引き上げる某チーム監督。(左前方)
思わぬ敗戦に、肩を落として家路に着く某チーム父親。(画面中央・爆)

じょうT

そう「一度きりの、今」


午後7時、すべての試合が終わりグランドを整備していると、西の空は茜色の夕焼け。360度の視界は様々な色に染まった空が広がる。
夏の終わり。季節はゆっくりと、秋へ。

雁の巣夕日



子供も大人も去った後の静寂に、虫の音があちこちから響く。




スポーツをテーマにしたユーミンの曲の中で、ラグビーをテーマにした『ノーサイド』も私の好きな一曲。
競技は違うのだが、それを見守る人の気持ちは同じかも。

意外と、こう感じる日は、近いかも?ですよ。






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